総務・人事・情シスには、「経費精算の締め日は?」「VPN につながらない」といった似た質問が毎日届きます。社内問い合わせ用の AI チャットボットを入れれば、こうした質問に自動で答えられます。ただ、製品ごとに回答の作り方や料金の考え方が大きく違うため、AI チャットボットを比較しようとしても、何を軸に見ればよいか迷いやすくなります。
この記事は、社内問い合わせやヘルプデスクの効率化を検討している情シス・総務・人事の担当者に向けて書いています。社内向けに使える AI チャットボット 9 製品について、料金、無料で試せる範囲、回答の元になる情報、連携できるチャットツールを比べます。
料金と上限は、2026 年 10 月 20 日時点で各社の公式サイトに掲載されている内容だけを書いています。公式で確認できなかった値は「要問い合わせ」としています。
結論:目的別のおすすめ
- Microsoft 365 と Teams を全社で使っている:Microsoft Copilot Studio。Teams や SharePoint の中で動く社内エージェントを作れます
- 自社でボットを作り込みたい、まず無料で試したい:Dify。無料の Sandbox プランと、セルフホストできる Community 版があります
- Teams に問い合わせ窓口をまとめ、AI と有人対応を組み合わせたい:PKSHA AI ヘルプデスク
- 情シスのヘルプデスクで、アカウント作成などの作業まで任せたい:Admina AI ヘルプデスク
- チケット管理と一緒に整えたい:Zendesk、Freshservice。問い合わせの記録と AI の自動応答を 1 つの製品で扱えます
社内問い合わせ用 AI チャットボットの選び方
回答の元を「FAQ」で作るか「資料」から作るか
AI チャットボットには、登録した FAQ(質問と回答の組)をもとに答える型と、規程やマニュアルなどの資料を読み込んで答えを組み立てる型(RAG 型)があります。FAQ 型は答えを確実に管理できる一方、想定問答を作って更新し続ける手間がかかります。資料から答える型は準備が軽く済みますが、資料そのものが古いと古い答えが返ります。両方を組み合わせる製品も増えています。
普段使っているチャットツールから聞けるか
社内向けのボットは、使われなければ問い合わせを減らせません。Teams・Slack・LINE WORKS など、社員が毎日開いているツールから質問できるかどうかで利用率が変わります。自社の主力のチャットツールに対応しているかを最初に確認しておくと安心です。
権限に応じて答えを出し分けられるか
人事評価の基準や役員向けの資料など、全員に見せてはいけない情報は社内に必ずあります。部署や役職ごとに参照できる資料を分けられるか、質問した人の権限の範囲で答えるかは、情報漏えいを防ぐうえで重要な確認点です。
答えの根拠が示されるか
生成 AI は、もっともらしい誤った答えを返すことがあります。回答に出典(どの資料のどこに書いてあるか)が添えられていれば、質問した人が自分で確認できます。答えられない質問を担当者へ引き継ぐ仕組みがあるかも確認しておきましょう。
料金の単位を確認する
料金の数え方は製品ごとに違います。利用する人数、問い合わせに対応する担当者の人数、AI の利用量(クレジットや回答件数)、FAQ の記事数などがあります。社員数が多い会社ほど、「誰の人数で数えるか」によって総額が大きく変わります。
運用を続けられるか
導入後は、答えられなかった質問の確認や、資料・FAQ の更新が続きます。問い合わせの傾向を見る画面や、会話のログから FAQ を作る機能があると、運用の負担を減らせます。
AIチャットボット比較表
| ツール名 | 無料プラン / 試用 | 有料プランの目安 | 料金の単位 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Microsoft Copilot Studio | 試用版ライセンスあり(エージェントの公開は不可) | 月額 29,985 円(税別)/ 25,000 Copilot クレジットのパック | テナント単位のクレジット | Teams・SharePoint で動く社内エージェントを作れる |
| Dify | Sandbox プラン(無料)/ Community 版(セルフホスト・無料) | Professional 年額 $590 / Team 年額 $1,590 | ワークスペース単位 | ノーコードで RAG 型のボットを作れる |
| Zendesk | 14 日間の無料トライアル | Support Team 月額 $19(年払い)/ $25(月払い) | 担当者 1 人あたり + AI の自動解決件数 | チケット管理と AI エージェントを一体で使える |
| Freshservice | 14 日間の無料トライアル | Starter 月額 $19(年払い) | 担当者 1 人あたり | IT サービス管理(ITSM)が中心 |
| PKSHA AI ヘルプデスク | 無料デモあり | 要問い合わせ | 要問い合わせ | Teams に窓口を集約し、AI と有人対応をつなぐ |
| HiTTO | 公式で確認できず | 要問い合わせ(初期費用なし) | 利用者数に応じた月額 | バックオフィスへの社内問い合わせ向け |
| Helpfeel | 無料相談・デモあり | 記事 1 件あたり月額 867〜1,200 円(目安) | FAQ の記事数 | 言い回しが違う質問でも FAQ を探せる検索型 |
| Admina AI ヘルプデスク | 2 週間のトライアル(料金ページの記載) | 個別見積もり | 要問い合わせ | 情シス向け。パスワード再設定などの作業も行う |
| NotebookLM Enterprise | 無料トライアルあり(条件は公式で確認できず) | 公式で確認できず | ライセンス | 資料を読み込んで質問できる。Google Cloud 上で管理 |
主要ツールの特徴
Microsoft Copilot Studio
Microsoft が提供する、AI エージェントを作るためのツールです。作ったエージェントは Teams や SharePoint、Web サイトなどで使えます。料金は、テナント単位で 25,000 Copilot クレジットを含むパックが月額 29,985 円(税別)です。従量課金や、前払いで最大 20% 割引になるプランもあります。Microsoft 365 Copilot のライセンス(1 人あたり月額 4,497 円相当、年払い)を持つ人が Teams や SharePoint でエージェントを使う場合、生成回答などはクレジットの消費に数えられません。Microsoft 365 を全社で使っている会社に向いています。設計と運用には Microsoft の管理画面の知識が必要です。
Dify
ノーコードで AI アプリやチャットボットを作れるオープンソースの基盤です。クラウド版は無料の Sandbox プラン(メッセージクレジット 200、メンバー 1 人、アプリ 5 個、ナレッジ文書 50 件まで)から始められます。有料は Professional が年額 $590、Team が年額 $1,590 で、どちらもワークスペースあたりの料金です。Team ではメンバー 50 人、ナレッジ文書 1,000 件まで使えます。自社のサーバーで動かす Community 版は無料です。自社でボットを作り込みたい会社に向いています。一方で、運用やセキュリティの設計は自社の担当になります。
Zendesk
問い合わせのチケット管理で広く使われている製品です。料金は担当者(エージェント)1 人あたりで、Support Team は月額 $19(年払い)、月払いなら $25 です。AI エージェントはすべてのプランに含まれ、自動で解決した件数に応じて課金されます(追加購入は 1 件 $1.50、従量課金は 1 件 $2.00)。社外向けのカスタマーサポートが中心ですが、社内向けの従業員サービスにも対応しています。社内の問い合わせ記録をきちんと残したい会社に向いています。
Freshservice
Freshworks が提供する IT サービス管理(ITSM)の製品です。料金は担当者 1 人あたりで、Starter が月額 $19、Growth が $49、Pro が $99(いずれも年払い)です。AI エージェント(Freddy AI Agent)は Enterprise プラン限定で、ライセンス 1 件あたり年間 1,200 セッションが含まれます。情シスのヘルプデスクを、資産管理や変更管理と合わせて整えたい会社に向いています。AI による自動応答を重視する場合は Enterprise プランが前提になる点に注意が必要です。
PKSHA AI ヘルプデスク
社内の問い合わせ窓口を Microsoft Teams にまとめる製品です。まず登録した FAQ で答え、次に SharePoint Online の文書から出典つきで答え、それでも解決しない質問は担当部署へ引き継ぎます。有人で対応した会話のログから FAQ を自動で作る機能もあります。料金は公開されておらず、問い合わせが必要です。Teams を中心に使っていて、AI と担当者の対応をつなげたい会社に向いています。
HiTTO
社内の定型的な質問に答える AI チャットボットで、主にバックオフィス部門の問い合わせを対象にしています。料金は利用者数に応じた月額課金で、質問数や回答数による課金はなく、初期費用もかかりません。具体的な金額は問い合わせが必要です。人事・総務への問い合わせを減らしたい会社に向いています。
Helpfeel
言い回しが違う質問からでも目的の FAQ を探し出せる、検索型の FAQ システムです。社内向けの用途にも対応しています。公式サイトでは、FAQ の記事 1 件あたり月額 867〜1,200 円の料金例を掲載しています(記事数が多いほど単価が下がる設定)。初期費用は問い合わせが必要です。すでに FAQ がそろっていて、社員が自分で答えを探せるようにしたい会社に向いています。
Admina AI ヘルプデスク
マネーフォワードが提供する、情シス向けの AI ヘルプデスクです。質問に答えるだけでなく、パスワードの再設定やアカウント作成、権限変更といった作業も行います。SaaS の契約や端末の台帳など、IT 資産のデータを参照して答えるのが特徴です。Slack・Microsoft Teams・LINE WORKS と連携できます。料金は個別見積もりです。料金ページには、すべての顧客が 2 週間のトライアルを利用できると書かれています。
NotebookLM Enterprise
Google Cloud で提供される企業向けの NotebookLM です。PDF や Google ドキュメント、Office ファイルなどを読み込み、その内容について質問できます。データは自社の Google Cloud プロジェクト内に保存され、ノートブックの共有は同じプロジェクトのメンバーに限られます。上限は、ノートブックが 1 人あたり 500 個、ソースがノートブックあたり 300 件、質問が 1 人あたり 1 日 500 回です。料金は公式ドキュメントで確認できませんでした。チャットボットというより、資料を調べる用途に向いています。
FAQ 型と資料から答える型の違い
社内問い合わせ向けの AI チャットボットを比較するときに、最も結果を左右するのが回答の作り方です。
FAQ 型は、想定される質問と回答を事前に登録しておく方式です。答えの内容を担当者が完全に管理でき、誤った案内が出にくいのが利点です。その代わり、規程が変わるたびに回答を直す必要があり、直し忘れた答えはそのまま案内されます。FAQ の数が増えるほど、管理の手間も増えます。
資料から答える型(RAG 型)は、就業規則やマニュアルなどの資料を読み込ませ、質問のたびに関係する箇所を探して答えを組み立てる方式です。想定問答を作る手間がほとんどかからず、資料を差し替えれば答えも新しくなります。一方で、資料に書かれていないことは答えられず、資料どうしが矛盾していると答えが揺れます。回答に出典が添えられるかを必ず確認しましょう。
迷ったら、問い合わせの多い 1 部署で小さく試すのがおすすめです。過去の問い合わせを 20〜30 件ほど選び、正しく答えられた割合と、答えられなかった質問の傾向を見ると、自社に合う型を判断しやすくなります。
導入前に確認しておきたいこと
- 入力したデータが AI の学習に使われないか:契約や設定で確認します
- 社内の認証基盤と連携できるか:シングルサインオンや、部署ごとの権限設定に対応しているか
- 答えられなかった質問がどこへ行くか:担当者への引き継ぎや、問い合わせの記録の仕組み
- 費用の総額:人数・担当者数・利用量のどれで増えるかを、自社の規模で試算します
Samurai App という選択肢
Samurai App は、社内チャットボットを Q&A の作り込みなしで用意できる製品です。ボットは取り込んだ資料(ナレッジ)を読み、出典を添えて答えます。想定問答を一問ずつ書く必要はありません。
答えに使うのは、聞いた人の権限と閲覧できる範囲の中の資料だけです。ナレッジは見せる範囲をグループごとに決められ、ボットは使う人本人の権限で動きます。Slack・Microsoft Teams・LINE・Chatwork のチャンネルを登録すると、そこから呼びかけて質問できます。ボットは画面の「+」から作れ、会話で「〇〇のボットを作って」と頼むこともできます。
料金は、会社に 1 本の基本料と、使用量に応じたクレジットの組み合わせです。招待する人数で料金は増えません。クレジットカード不要の無料トライアルで、製品そのものを試せます。
よくある質問
社内問い合わせ用の AI チャットボットは無料で使えますか?
Dify のように無料プランやセルフホスト版がある製品もありますが、使える回数やメンバー数に上限があります。社内全体で本格的に使う場合は、有料プランか見積もりが前提になる製品がほとんどです。まずは無料トライアルやデモで、自社の資料で正しく答えられるかを確認するのが確実です。
AI チャットボットを入れれば FAQ の整備は不要になりますか?
資料から答える型なら、想定問答を一問ずつ作る作業は減らせます。ただし、元になる資料が古かったり矛盾していたりすると、答えも不正確になります。資料の置き場所と更新の担当を決めておくことは、どの型でも必要です。
社外向けのチャットボットと何が違いますか?
社外向けは、顧客からの問い合わせ対応や Web サイトでの案内が目的です。社内向けは、社員の質問に答え、部署や役職による情報の出し分けが求められます。セキュリティの要件も違うため、同じ製品で両方を扱う場合でも、権限の設定を分けて考えましょう。
導入の効果はどう測ればよいですか?
導入前に、部署ごとの問い合わせ件数と対応にかかっている時間を記録しておきます。導入後は、ボットだけで解決した件数、担当者へ引き継いだ件数、答えられなかった質問の内容を定期的に見ると、改善すべき資料や FAQ が分かります。
出典
- Microsoft Copilot Studio 料金
- Microsoft Copilot Studio ライセンス(Microsoft Learn)
- Dify 料金
- Zendesk 料金
- Freshservice 料金
- PKSHA AI ヘルプデスク
- HiTTO 料金体系
- Helpfeel 料金
- Admina AI ヘルプデスク
- Admina 料金
- NotebookLM Enterprise の概要(Google Cloud)
料金と仕様は 2026 年 10 月 20 日時点で各社の公式サイトで確認したものです。最新の情報は各社のサイトでご確認ください。