AI エージェントは、指示を受けて答えを返すだけでなく、自分で手順を考え、ツールや外部サービスを操作して仕事を進める AI です。業務自動化の手段として注目が集まり、製品の数も一気に増えました。一方で、「AI エージェント」と呼ばれる製品の中身は、ノーコードで自社用のエージェントを作る基盤から、頼めばブラウザを操作して調べものをする汎用エージェントまで大きく異なります。
この記事は、業務自動化に AI エージェントを使いたい情シス・業務改革・営業企画の担当者に向けて書いています。主要な AI エージェントを 4 つの種類に分けて比較し、料金の単位、無料で試せる範囲、導入前に確認したい点を整理します。
なお、ChatGPT や Claude などの生成 AI チャットの法人プランの比較は、この記事では扱いません。24 時間動き続ける自律型のエージェント(OpenAI の dots、OpenClaw など)は、自律型AIエージェント比較6選で比較しています。料金と上限は、2026 年 10 月 20 日時点で各社の公式サイトに掲載されている内容だけを書いています。
結論:目的別のおすすめ
- Microsoft 365 の中で社内向けのエージェントを作りたい:Microsoft Copilot Studio
- 自社専用のエージェントをノーコードで作り込みたい:Dify、n8n
- いつもの SaaS どうしをつなぐ自動化に AI を足したい:Zapier、Make
- 調べものや資料づくりをまとめて任せたい:Manus
- 営業・顧客対応や開発など、特定の業務に絞って任せたい:Salesforce Agentforce(CRM)、Devin(ソフトウェア開発)
AIエージェントの種類
比較の前に、AI エージェントの種類を整理しておきます。この記事では次の 4 つに分けています。
- ノーコードの構築基盤:画面上の操作で、自社用のエージェントやチャットボットを作る製品(Copilot Studio、Dify)
- ワークフロー自動化:SaaS どうしをつなぐ自動化の中に、AI の判断を組み込む製品(n8n、Zapier、Make)
- 汎用エージェント:目的を伝えると、計画から実行までを自分で進める製品(Manus)
- 業務特化型:特定の業務やシステムの中で動く製品(Agentforce、Devin、Glean)
構築基盤とワークフロー自動化は「作る人」が必要で、汎用エージェントと業務特化型は「すぐ使える」ことが多い、という違いがあります。
AIエージェントの選び方
誰が作り、誰が使うか
ノーコードの構築基盤でも、エージェントの設計には業務の手順を分解する力が必要です。社内に作り手がいるなら構築基盤、いないなら完成品に近い汎用エージェントや業務特化型が候補になります。
既存のシステムとつながるか
エージェントが社内のデータや SaaS を操作できなければ、結局は人が結果を転記することになります。自社で使っているチャット、ストレージ、CRM などとの連携が用意されているかを確認しましょう。MCP(エージェントと外部ツールをつなぐ共通の仕組み)への対応も確認点の 1 つです。
どこまで任せ、どこで人が確認するか
下書きを作るところまでか、送信や登録まで任せるかで、求められる管理の仕組みが変わります。メールの送信や外部システムの更新を任せる場合は、実行前に人が承認する仕組み(Human-in-the-loop)があるかを確認します。
権限と記録
エージェントがどのデータを読めるかは、使う人の権限に合わせる必要があります。誰が、いつ、何を実行させたかの記録(監査ログ)が残るかも、情シスの審査で必ず問われる点です。
料金の単位
AI エージェントの料金は、ユーザー数に加えて、実行回数・クレジット・アクション数などの利用量で決まることが多くなっています。利用量で課金される製品は、本格運用でどれだけ使うかを見積もってから契約しないと、想定より費用が増えることがあります。
AIエージェント比較表
| ツール名 | 種類 | 無料プラン / 試用 | 有料プランの目安 | 料金の単位 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Microsoft Copilot Studio | 構築基盤 | 試用版ライセンスあり(公開は不可) | 月額 29,985 円(税別)/ 25,000 クレジットのパック | テナント単位のクレジット | Teams・SharePoint で動くエージェントを作れる |
| Dify | 構築基盤 | Sandbox(無料)/ Community 版(セルフホスト・無料) | Professional 年額 $590 / Team 年額 $1,590 | ワークスペース単位 | ノーコードでエージェントと RAG を組める |
| n8n | ワークフロー自動化 | Cloud の無料トライアル / Community 版(セルフホスト) | Starter 月額 20€ / Pro 月額 50€(年払い) | 月間の実行回数 | 全プランでユーザー数とワークフロー数が無制限 |
| Zapier | ワークフロー自動化 | Free(月 100 タスク / Agents は月 400 アクティビティ) | Pro 月額 $19.99(年払い・750 タスク) | タスク数 / アクティビティ | 多くの SaaS とつなげる。Agents は別枠 |
| Make | ワークフロー自動化 | Free(月 1,000 クレジット) | 公式で確認できず | クレジット | 画面上でシナリオを組み立てる |
| Manus | 汎用エージェント | Free(日次で補充されるクレジット) | Pro 月額 $20(月 4,000 クレジットの例) | クレジット | 調べものや資料づくりを自分で進める |
| Salesforce Agentforce | 業務特化型(CRM) | Salesforce Foundation(無料) | Flex クレジット 60,000 円 / 10 万クレジット | アクション / 会話 / ユーザー | Salesforce のデータの中で動く |
| Devin | 業務特化型(開発) | Free | Pro 月額 $20 / Teams はフルシート月額 $40(最低 $80) | 1 人あたり + クレジット | ソフトウェア開発を任せる |
| Glean | 業務特化型(社内検索) | 公式で確認できず | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 社内の情報を横断して検索し、エージェントで作業する |
主要ツールの特徴
Microsoft Copilot Studio
Microsoft の、AI エージェントを作るためのツールです。作ったエージェントは Teams、SharePoint、Web サイトなどで使えます。料金は、テナント単位で 25,000 Copilot クレジットを含むパックが月額 29,985 円(税別)です。使った分だけ払う従量課金や、前払いで最大 20% 割引になるプランもあります。Microsoft 365 Copilot のライセンス(1 人あたり月額 4,497 円相当、年払い)には Copilot Studio の機能の一部が含まれ、社内向けのエージェントを追加費用なしで作れます。Microsoft 365 を全社で使っている会社に向いています。
Dify
ノーコードで AI エージェントやチャットボットを組めるオープンソースの基盤です。クラウド版は無料の Sandbox プラン(メッセージクレジット 200、メンバー 1 人、アプリ 5 個)から始められます。有料の Professional は年額 $590、Team は年額 $1,590 で、どちらもワークスペースあたりの料金です。自社のサーバーで動かせる Community 版は無料です。自社のデータを使ったエージェントを作り込みたい会社に向いています。セルフホストする場合は、運用とセキュリティの設計が自社の担当になります。
n8n
ワークフロー自動化のツールで、AI エージェントを処理の 1 つとして組み込めます。料金は月間のワークフロー実行回数で決まり、Starter は月額 20€(年払い・月 2,500 回)、Pro は月額 50€(年払い・月 10,000 回)です。全プランでユーザー数とワークフロー数は無制限です。Cloud 版は、クレジットカード不要の無料トライアル(実行 1,000 回まで)で試せます。セルフホストの Community 版もあります。エンジニアがいて、細かく作り込みたい会社に向いています。
Zapier
多くの SaaS どうしをつないで作業を自動化するツールです。Free プランは月 100 タスクまでで、2 ステップの自動化に限られます。Pro は月額 $19.99(年払い・月 750 タスク)からで、月払いは $29.99 です。AI エージェントの機能(Zapier Agents)は別の枠で数え、Free では月 400 アクティビティ、Pro では月 1,500 アクティビティ(年払いで月額約 $33.33 から)使えます。普段の SaaS 操作に AI の判断を足したい会社に向いています。
Make
画面上で処理の流れ(シナリオ)を組み立てる自動化ツールです。料金はクレジットで数え、多くの処理は 1 回 1 クレジットを使います。AI を使う処理は、より多くのクレジットを消費する場合があります。Free プランは月 1,000 クレジットです。有料プラン(Core、Pro、Teams)の金額は、公式の料金ページの本文で確認できませんでした。年払いのほうが月払いより安くなります。
Manus
目的を伝えると、計画から調査、資料づくりまでを自分で進める汎用エージェントです。料金はクレジット制で、公式ヘルプでは月額 $20 の Pro で月 4,000 クレジットが付与される例が示されています。Free プランには日ごとに補充されるクレジットがあり、月の消費上限は 1,500 クレジットです。Team プランもあります。調べものや資料づくりを丸ごと任せたい場面に向いています。タスクの内容によって消費するクレジットが変わるため、試用で目安をつかんでおくと安心です。
Salesforce Agentforce
Salesforce の中で動く AI エージェントです。エージェントを作るツールは、無料の Salesforce Foundation で使い始められます。料金は、Flex クレジットが 10 万クレジットあたり 60,000 円(アクション 1 回で 20 クレジットを消費)、会話課金が 1 件 240 円です。営業・サービス向けのユーザー単位のアドオンは 1 人あたり月額 $125(15,000 円)です。Salesforce に顧客データを集めている会社に向いています。
Devin
ソフトウェア開発を任せる AI エージェントです。Free プランがあり、Pro は月額 $20、Max は月額 $200 です(いずれも 1 人あたり)。Teams はフルシートが 1 人あたり月額 $40 で、最低額は月額 $80、最大 200 人まで使えます。上限を超えた分はオンデマンドのクレジットで支払います。開発チームのバックログ消化やコードの修正を任せたい会社に向き、開発以外の業務には向きません。
Glean
社内の情報を横断して検索し、その結果をもとにエージェントで作業を進める製品です。ノーコードでエージェントを作れます。利用者の権限に基づくアクセス制御と、質問・回答・実行の追跡に対応しています。料金は公開されておらず、デモの依頼から始まります。社内のツールや資料が多く、まず「探す」時間を減らしたい大企業に向いています。
AIエージェントと RPA・チャットの AI の違い
RPA は、決められた手順を正確に繰り返す仕組みです。画面の配置や手順が変わると止まりますが、同じ処理を大量にこなすのは得意です。AI エージェントは、状況に応じて手順を考え直せる代わりに、毎回同じ結果になるとは限りません。定型で量の多い処理は RPA やワークフロー自動化、判断を伴う処理は AI エージェント、と分けると考えやすくなります。
チャットの AI は、質問に答えたり文章を作ったりするところまでが仕事です。結果を社内のシステムへ入力したり、ファイルを作って共有したりする作業は人の手に残ります。AI エージェントは、その後半の作業まで進める点が違います。その分、何を任せ、どこで人が確認するかを決めておく必要があります。
導入を失敗しないための進め方
- 任せる業務を 1 つに絞る:手順がはっきりしていて、失敗しても取り返しがつく業務から始めます
- 人が確認する場所を決める:送信・登録・支払いなど、外に影響が出る操作の前には承認を挟みます
- 小さく試して測る:かかった時間、やり直しの回数、利用量の費用を記録します
- 広げる前に権限と記録を確認する:部署を増やす前に、権限の設定と監査ログの残り方を情シスと確認します
Samurai App という選択肢
Samurai App の AI エージェントは、社内のナレッジやテーブルを読み、ブラウザやつないだ外部サービスを操作して仕事を進めます。相手はいつも同じ 1 体のエージェントで、依頼に合うスキルをエージェント自身が選びます。業務ごとにエージェントを作り分ける必要はありません。
情報が足りないときは確認の質問をし、手順の多い仕事では実行計画を見せてから進めます。機微な操作の前には承認カードを出し、承認するまで先へは進みません。扱えるのは、頼んだ人の権限と閲覧できる範囲の中だけです。使う AI モデルは入力欄で選べ、自社で用意したモデルの API キーを持ち込む(BYOK)こともできます。
料金は、会社に 1 本の基本料と、使用量に応じたクレジットの組み合わせで、招待する人数では増えません。クレジットカード不要の無料トライアルがあります。
よくある質問
AI エージェントとチャットの AI は何が違いますか?
チャットの AI は、質問への答えや文章を返すところまでです。AI エージェントは、手順を自分で考え、外部のツールやサービスを操作して仕事を進めます。そのため、権限の範囲や、実行前に人が承認する仕組みが重要になります。
業務自動化に AI エージェントを使うには、プログラミングが必要ですか?
Copilot Studio や Dify、Zapier のように、画面上の操作でエージェントや自動化を作れる製品があります。ただし、業務の手順を分解して設計する作業は必要です。作り手がいない場合は、汎用エージェントや業務特化型の製品から試すのが現実的です。
AI エージェントは無料で試せますか?
Dify、n8n、Zapier、Make、Manus、Devin などは、無料プランや無料トライアルを用意しています。ただし、実行回数やクレジットに上限があるため、本格的な業務で使うには有料プランが前提になります。
AI エージェントに任せてはいけない業務はありますか?
誤りがあったときに取り返しがつかない操作(支払い、契約、外部への一斉送信など)は、承認を挟まずに任せるべきではありません。最初は下書きや調査など、人が結果を確認できる業務から始めるのが安全です。
出典
- Microsoft Copilot Studio 料金
- Microsoft Copilot Studio ライセンス(Microsoft Learn)
- Dify 料金
- n8n 料金
- Zapier 料金
- Make 料金
- Manus クレジットの消費と取得(ヘルプ)
- Salesforce Agentforce 料金
- Devin 料金(セルフサーブのプラン)
- Glean 料金
料金と仕様は 2026 年 10 月 20 日時点で各社の公式サイトで確認したものです。最新の情報は各社のサイトでご確認ください。